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【リスキリング vol.04】Amazon社、AT&T社の主な事例とは?

前回の【リスキリング vol.03】の続きですが、今回はAT&T社とAmazon社の事例について深く見ていきたいと思います。引き続きリサーチャーのMIWAさんにお話を伺っていきます。


   ハードからソフトへ。技術者そのものを変革させるAT&Tのリスキリング

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イメージ写真です。


AT&Tはどんな背景で、どういったことを取り組んだのでしょうか?

AT&T(https://www.att.com/)は、創業133年という歴史の長い、みなさんもよく知る電話会社なのですが、ある意味老舗の電話会社であるという点で、元々はハードウェアの技術が強い会社でした。ところが、時代の流れにより通信業界の急速な技術の発展に伴って、ハードも必要だけれども、どちらかといえばソフト技術が時代と共に重要かつ必要になってきました。そこで、生き残りをかけて従業員の技術面でも徹底的な見直しが必要だと感じ、HR面でのリスキリングチャレンジが生まれました。元々はハードに強かった会社がソフトウエアの会社になり、ソフトが主流になる中でリスキリングが不可欠になった、大変わかりやすい事例ですね。

あと、AT&Tの興味深いところが、従業員の在職年数  平均12〜22年(コールセンターを除く)なのですが、これはアメリカでは珍しく、非常に長い在職年数を誇っている会社なのです。でも、特に給与が高いということもなく、会社そのものの居心地が良かったりだとか、そういった技術者が動かない環境だったということが結果を示しているんですよね。なので、外から新しい人材を入れるというよりも、既存の大勢のハードウエア技術者をリスキリングしてソフトウエアでも活躍できるように変革し、新しい時代へ対応しようとしたのですね。



在職年数の長さは、会社の中でリスキリングを通じて、様々な経験ができるようになったから ということでしょうか?

そうですね。ハードの部分というのは、ある程度の年数と経験を通して培われていくという、いわば「職人」のような文化があったのではないのかと思いますが、2008年以降に、ケータイ電話やスマートホンが普及する中で「そもそも家電(家の固定電話)を必要としなくなってきた時代」に変化するという、大きな転機が訪れました。家電が姿を消し、モバイルとソフトウェア中心の世界になったことによって、2016年にAT&Tは衛星やストリーミングに強いDirecTVを買収しました。DirecTV(https://www.directv.com/)は衛星テレビの会社なのですが、この買収によってソフト面での技術者を一気に増やすと同時に、従業員の既存スキルを、新しい社員と共創しながらアップスキルへとトレーニングする必要が出てきました。

また、世の中全体がクラウドベースになってきたという背景も大きいですね。過去は電話線が主流だったものが、完全にクラウドによる管理になったことにより、クラウドベースのコンピューティングや、データサイエンスなどのハイテク技術が社内でも急速に必要になってきました。とはいえ、旧来のAT&T社内だけでは、ハードウェア人材を一気にソフトウェア技術者にするには、全然そのレベルに達していないという当時の課題が大きくありました。また、外から新たに人材を採用しようとしても、急速に伸びていくIT技術に比例して、ハイテク人材における採用市場の競争率は非常に高く、エンジニアにとっても人気であったGAFAなどの大手IT企業に人材が流れていくことも含み、AT&Tは良い人材を確保することが難しいという課題があり、そういった文脈で従業員教育 = リスキリングに結びついていきました。



   コロナでも業績を伸ばすAmazon。背景にはアップスキルを目指す社員の姿が。
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イメージ写真です。


では次に、Amazonはどのような取り組みをしたのでしょうか?

Amazonは2019年にリスキリングの取り組みを始めました。この時点では『アップスキリング(Upskilling)2025』と呼ばれるプロジェクトのもと進めている段階でした。投資金額としては、当初$700million(約760億円) としていたところを、後に$1.2billion(約1300億円)まで増やしました。それくらい、アップスキリングに対する重要性を感じていたということですね。

少し遡りますが、2005年頃、実はAmazonはブラック企業だとメディアに叩かれていたんですね。賃金の問題や労働層に対する待遇の悪さ、白人&頭脳組と労働組の格差問題などが主な理由でしたが、それらの問題をなんとか解決しなければならないというのが、長年の課題として根底にありました。

本来は、社内でアップスキリングできればよいのですが、『教育が足りない』という部分は基本的にその人の個人的な側面が大きいため、各人が足りないと思う部分を、各々が自分で教育を受けられるという環境を整え、提供していくことが必要だという考えのもと、外部の専門機関の協力を得ながらアップスキリングを行っていきました。具体的な内容としては、従業員が低コストで教育機関で学ぶための「金銭的サポート」を行ったようです。これはAmazonだけでなく、前述した Walmart や AT&T も同様なのですが、従業員は教育機関(大学やコミュニティカレッジなど)に入学し、そこでプログラムや単位を取り、その技術を職場に還元させるという環境整備をしていました。これにより、ITサポートやノンテク(専門的な技術がない人)の従業員が教育機関で技術を学ぶことにより、エンジニアとして会社の中で新たな立ち位置で貢献できるようになりました。

ちなみに、このコロナ禍であっても、Amazonは群を抜いて利益をあげている企業ですよね。流通業界では多くの企業が倒産したり、事業を縮小しているといった状況の中で、Amazonは順調に拡大し続けています。コロナ禍であってもEC市場は活発に動いているので、この受け皿としてのAmazonの立場はとても大きいと思います。やはりパートナーシップを沢山の企業と組んで、企業内の従業員自身も様々な機会の中で成長し続けることのできる環境がある というのも大きいですよね。

 

リスキリングvol.05  につづく・・・