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【リスキリング vol.03】Walmart社の斬新なリスキリング事例とは?

前回の【リスキリング vol.02】の続きとして、今回は実際にWalmart社の事例について深く見ていきたいと思います。引き続きリサーチャーのMIWAさんにお話を伺っていきます。


   アップスキルのためだけではなく、最新技術への学びを深めるためのリスキリングも必要
  004_walmartイメージ写真です。


Walmartはなぜどこよりも早くリスキリングプログラムを提供したのでしょうか?

2016年に、Walmart社がどの企業よりも早くリスキリングへの多額投資を行った背景には、ちょうど同年に、WEF(世界経済フォーラム)での主要テーマとして「第四次産業革命の理解」が取り上げられ、その中で《リスキリング》の重要性も明示されていたことが大きいと思われます。Walmartは他の企業よりもはるかに大きな世界規模で動いているグローバル企業で、まさに世界経済の課題というものが、Walmartの企業課題と完全に直結していたということです。

また、Walmartというと、日本でいう「SEIYU」みたいな庶民的な総合スーパーという位置づけですよね?アメリカでも同じで、Walmartは「低所得・中所得消費者層向けの企業 (お店) 」というイメージがあります。さらにWalmartは、社会や労働層と密着した企業だという側面もあり、長年に渡ってこのような雇用問題や環境問題にも向き合ってきた企業です。この2つの背景があって、Walmartは10年前に「持続可能性の挑戦」として、いわゆる今で言うSDGsのような取り組みにも向き合ってきました。そして同様に、この雇用・労働問題に関しても真摯に向き合い、世界中の企業のファーストランナーとして、どの企業よりも早い段階でリスキリングがスタートしていたんですね。


《リスキリング》は消費者やユーザーなどの低中経済層と連動していたということでしょうか?

そうですね。すでに2016年の時点で、会社としては『The kind of company』を掲げ、人々やコミュニティに優しい企業になるという方針を、かなり中心核に置いていました。つまり、企業が世界の課題に対して、それを解決していく責任があるということ。大規模なグローバル企業として、そこに責任をもってCRバリューを高め、2016年の当時から見た先の10年というのは、重要な価値共有をしていく企業になっていくんだという強い意思を感じました。

Walmartは「sustainability」「opportunity」「community」をいう三本柱を軸に掲げています。その中で《リスキリング》に直結しているのは、主に「opportunity」の柱です。社会に密着し、あらゆる学歴の人にも雇用の機会を提供すること。また、社員になった後は、さらに労働者に向けた教育を提供することで、エントリーレベルから徐々に社内ステップアップすることも可能となり、従業員
の生活そのものを豊かにすること。そこがリスキリングの一番中心核になるであろうということが、すでに見えていたようです。Walmartにおいて、社内外でのコミュニティーを通じて雇用を生み出したり、人々を貧困スパイラルから抜け出すための教育環境を提供するなど、労働者とその周りにいるコミュニティーとの関わりは非常に大きいと感じます。



なるほど。では具体的にはどのようなプログラムを提供したのでしょうか?

主に、労働者に対する労働賃金、福祉履行性やトレーニングなどに投資をしてきたようです。モビリティ(流動性や移動性)労働者が、自分が持っている技術をさらにアップスキリングするのもそうですが、Walmartではそれとは別に、他の分野への学びとして《リスキリング》することによって
違う職種分野でも働けるようにするためのトレーニング実施をし、本質的な部分に注力していったようです。
2019年までに、女性に対して農業・工業のみならず、アメリカ本土で働いている人以外の世界中のWalmartで働いている従業員に対してのトレーニングに、$20milliom(約22億円)の投資を行いました。

具体的な内容としては【リスキリングvol.01】でもお話をしましたが、政府や教育機関との連携を実施しました。2016年当時、すでに従業員の三分の一は《リスキリング》が必要だとされていました。世界経済フォーラムでも、65%はすでになくなっていく職だといっていたと思うのですが、そういう観点でも教育というものは企業にとっても無くてはならないものだと感じてきました。
では、これまでの教育投資と一体何が違うの?というと「life long learning program」つまり、今までの教育は一時的にしか実を結ばない、ここで教えてハイ終わり!的なものだったので全く継続性がなかったものでしたが、これからの教育は時代
の変化に対応しながら、長い時間をかけてずっと学び続けていける形に変化していったというところが、これまでとの大きな違いかと言えますね。



ー 「長く学び続けられる環境を提供した」ということでしょうか?

そうですね。Walmartでは、新入社員教育だけでなく、そこからマネージャーレベルへ引き上げていくためのスキルであったりとか、そういった昇進のチャンスを与えるというところが大きな特徴です。トレーニングプログラム、アップスキリングにフォーカスしたプログラム、コンピューターベースラーニングなども実施していました。Walmartの社員は、学歴も低く高校を卒業していない人も多数在籍しているのが現状で、たとえ「勉強の機会を与えます!」と言っても、そもそも勉強が嫌いな人が多いのでは?ということを先に見越して、カリキュラムには工夫をしていったようです。例えば、ただ単に参考書を渡すような教育方法ではなく、対面での教育実施はもちろん、オンラインで行うウェビナーを取り入れたり、特に興味深い取り組みの1つが、VR(Virtual Reality)を使った教育方法ですね。勉強や学ぶことに対して興味が薄い労働者であっても、VRを通してゲーム感覚で楽しく学べるという取り組みを行ったのはWalmartならではと言えます。あとはハンズオンで学べるような内容があったことも、この企業のリスキリングにおける特徴です。



   実にユニーク!VRを駆使したリスキリングを実施したWalmart社

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イメージ写真です。


VRで学ぶリスキリングって非常に面白い事例ですね!実際にどんなことをVRで行っていたのでしょうか?


気になりますよねー(笑)VRで行っていた教育の1つが、カスタマーサービスやフロントラインの従業員トレーニングです。まず、自分たちが接客側としてどういう視点でお客様や売り場を見ているのかをVRを使って分析します。そして分析結果から新たな課題点を見出したり、「こういう場合はこうしなければならない」などの実体験をVRで実際に従業員自身が擬似体験をして、そこから学びを深めていくようなバーチャル研修を行っていたようです。今までは経験しないと分からなかったことが、VRの擬似体験を通して、実際に接客されているような体験ができ、そこから顧客側の本質的なニーズを理解したり、接客側の問題点を解決していくといった、極めて実践的なトレーニングを実施してました。これが実際に、従業員のパフォーマンスが上がったという結果が、データとしても公表されています。

もうひとつは、時代とともに変化していく業務に関連した、新しい技術や業務フローに対しても、このVR教育を実施していました。ネット通販が増えてきた昨今、ネットで購入し、お店に商品を取りに行くといった機会も増えてきましたよね。従来ではこのフローは、主にカスタマーカウンターなどで商品が保管されていて、お店にいくと『はい、どうぞ』と人から手渡しで受け取っていたのが普通でした。しかし現在のWalmartは、巨大な「自動商品引き渡し機」のようなものが各店舗に設置されていて、顧客がスマホ一つで購入商品を受け取れるという新しいシステムが生まれました。購入者はQRコードを被せて商品が出てくるだけなのですが、その商品の入れ替え作業は、やはり従業員の仕事です。なので、その巨大な自動商品引き渡し機に、どうやって商品を入れて管理していくのかは新しく学ぶ必要があり、そこでVRが活用されたわけです。最新の技術に伴って追加された業務内容やデジタル技術の教育、スタッフへの細かな手順や一連の仕事の流れ等を、VRを導入してトレーニングしていったようです。

 

次回、リスキリングvol.04 〜 AT&Tの事例 〜 につづく・・・