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【レポート】vol.01 〜 リスキリングが国や企業、個人にもたらす幸福と成長とは?


昨年、このコーポレートブログでもご案内した「リスキリングJAPANカンファレンス2022」
当日は様々な業界でご活躍されている方をゲストにご登壇いただき、熱いセッションが繰り広げられました。
その中でも、改めて今後のリスキリングの必要性を考える時間となった、
ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事の後藤宗明氏(以下「後藤」)と
ジャーナリストの浜田敬子氏(以下「浜田」)の
オープニング・セッションの内容を
この度イベントレポートとして、計3回に渡ってご紹介いたします。まずはゲストのご紹介から!


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   リスキリングが国や企業、個人にもたらす幸福と成長とは…

 

  浜田  

後藤さんの note を拝見したのですが、アメリカでテクノロジーが進化するにつれて、人材教育の必要性も言われてきたと書かれていますね。
また、日本でも話題になったマイケル・オズボーンの「雇用の未来」という論文を読んで衝撃を受けたと書かれています。

 

  後藤  

2014年くらいだったと思いますが、僕がアメリカに出張中だった時に、ニューヨークで2027年にアメリカの雇用の47%がなくなる」と、当時大きな話題になっていたのです。元々僕は社会的課題を解決するジャンルをすごく大切にしてきていて、これからの人間や人類は、テクノロジーが進むことによって雇用がなくなっていくという未来に向き合って、テクノロジーやロボット、AIと一緒に協同でその仕事をしていく未来こそが、大きな社会的課題解決になるということが、何となく自分の中で現実味を帯びてきたのです。自分はここの領域で活躍できるようになりたいなと思うようになって、『The future of Employment』の論文を読み、とても感銘を受けました。マイケル・オズボーン先生に、Linkdinで熱いサンキューレターを書いて、先生と少しコミュニケーションを取らせてもらえるようになり、本当に自分にとってはあの論文が衝撃的な出来事でした。

 

  浜田  

あの論文の中で、当時特にAIによって奪われる仕事というので話題になったのが、例えば保険の審査業務とか、いわゆる弁護士とか士業ですね。ホワイトカラーだけど超高度人材ではなくて、中等〜高度の人材の仕事や、自動運転でトラック運転手が無くなるとか。あのとき、多岐にわたる仕事が無くなるという恐怖感ばかりが、結構センセーショナルに報じられましたよね。あれだけインパクトのある論文が出た後、世界と日本をご覧になって、無くなる仕事の人材をどうしていくのかの議論は進んでいると思われますか?

 

  後藤  

はい、国内ではまだまだですが、実はすでに世界ではかなり進んでおりまして、3年前くらいから The World Economic Forum(世界経済フォーラム)が中心となって、無くなっていく雇用に対して人間の雇用を維持し、しっかりと成長産業に労働移転ができるように、全世界に向けてリスキリングによって技術的失業を防いでいこうとするアクションは非常に積極的になってきています。
しかし残念ながら、日本ではなかなかその海外のムーブメントみたいなものが入ってこなくて、やっと今年の1月1日の日経新聞で、技術的失業についての特集記事が出まして、日本ではやっとこれから注目されるのかなと思います。

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※写真は当日のオープニングセッションの様子。Zoomを使ってオンラインでの対談を実施しました。


  浜田  

そうですね、個人的には「日本こそ重要性が高いのではないか」と私自身は感じています。
というのも、私自身がまさにバブル世代で大量採用された50代で、恐らく日本の大企業・中小企業には、私のように新卒で一社目に入社してずっと年功序列で同じ
会社に残っているという人って、意外に少なくないと思っています。

私はリンダ・グラットンの「ライフシフト」が大きなきっかけになって、50歳で転職しました。「人生100年時代」という言葉が日本でもすごく知られるようになり、この流れの政策として、人生100年時代に個人の学びというものをすごく大事にしようということは、日本でも数年前から言われていますよね?

当時の私は、定年が60・65歳くらいだとしたら、いっそのこと早く仕事を辞めて、悠々自適な生活を送りたいなと思っていたのです。そんな時、幸運なことにリンダさんが来日されていた時のモデレータを務めることになったのです。

楽屋でリンダさんに「私はこれまで働きすぎで本当に疲れているので、早くリタイヤして好きなことしたいと思っているんです」と話をしたら「敬子さん、何言ってるの?あなたの世代は94歳まで生きるわよ」と…。当時リンダさんは62歳だったのですが、「私の同世代や大学の同僚だった人たちなんかは、早めにリタイヤをしてガーデニングやクルージングをしているけれど、皆数か月で飽きているわよ。だから仕事は絶対に長く続けた方がいいのよ」と言われたのです。

当時は結構それがショックで、自分は何も考えていないのではないかと思ったのです。それをきっかけに、長く仕事を続けるにはどうしたらいいのかということを、改めてしっかり考えることにしました。その時に、長年の間ニュースの仕事をやってきた私は、やはり改めてこのメディアの仕事が好きだなと実感したのです。

しかしながら、新卒で入った朝日新聞社で培った自分のスキルや知識、人脈などは、たとえば私が70歳まで働いたときにも同じように通用するものなのだろうか?と考えたときに、やはりニュースの主戦場はデジタルに移っていると思ったんですよね。今までは紙媒体のメディアでしか経験がなかったので、デジタルのメディアはやったことがないですし、0から何か新規事業を立ち上げたという経験もなく、この2つが私にとって足りない能力であることに気づきました。そして、たまたまその時に転職の話を頂いたので、これはものすごいチャンスだと思って、迷いなく転職をしたのです。

こうして私の場合は、転職によって図らずともスキルアップができたと思うのですが、ここで改めて後藤さんにお伺いしたいのは、後藤さんは10年かけてご自身をリスキリングされたと言われていますが、転職によってスキルをアップデートしていくというのは、実は一番実現しやすいものなのではないかと思うのですが、いかがでしょうか? 

  後藤  

はい、ここはまさにイエス!と言いたいところなのですが…。実は私は、それに伴ってものすごく難しい面も同時に経験しました。

「35
歳 転職限界説」という言葉が日本でもあったと思うのですが、仮にテクノロジーの分野に行きたい!と思っても、その分野のスキルをすでに持っていたり、同じ道でのキャリアや実績がないと、結局希望する転職ってできなくなるんですよね。

僕の場合は、40歳で初めて転職活動をしたのですが、100社以上応募して落ちまくりました(笑)テクノロジーのジャンルに行きたいんです!ということを書いても、過去経験したことがなければ、チャンスすらもらえない。今は日本もデジタル化に向かっているので、やる気があればチャンスをくれるところも多少あるとは聞いていますが、当時は全く相手にしてもらえなかったのが事実です。

そんな中、わずかな僕の過去の経験を「面白い」と見込んでくれた、とある会社の社長さんに拾って頂き、それが今の自分につながっています。当時たまたま通信ネットワークの仕事をやらせて頂くことになって、最初は右も左も分からないのにも関わらず、ミーティングの時には分かったような顔をしながら、会議が終わった後には知らない用語をネットで調べまくるような毎日を送っていました。

しかし、その用語を調べながら頭の中で理解出来ても、なかなか腑に落ちない部分もたくさんありました。わからない部分をメモに書き留めて、クライアントや取引先の方に「すみません、ちょっと教えて頂いてもいいですか?」と話して、都度都度教えて頂いたりもしていました。

僕の場合は、たまたまその環境の中で日々必死にやっていくっていうことができたので、良かったのだと思います。しかし、おそらく皆が皆転職をしてその場でチャンスをもらえるのかどうかというと、なかなか厳しいなというところもあると思います。

 

  浜田  

なるほど、特に40代や50代まで、一度も転職した経験もなく、同じ会社でずっと同じ仕事をしてきた人が、新しい仕事に就くっていうのは、すごくハードルが高いわけですね。

  後藤  

そうだと思います。しかし、1つそこのソリューションとしてオススメしているのが「副業制度」です。副業制度を活用できる会社の場合は、自分の持っているスキルを提供する代わりに、空いた時間で学びたいことにチャレンジさせてもらう。欧米では「アプレンティスシップ制度」という見習いの制度がすごく進んでいるのですが、そういった形で40〜50代の方がこれからリスキリングをするというチャンスが、これからの時代とても重要になるのではないかと思っています。

  浜田  

すごくそれは腹落ちする話ですよね。私は50歳で転職したときに、編集部では私だけが突出して50代で、他は皆20〜30代でした。圧倒的に編集の技術や人脈、知識は私の方があるのですが、SNSの運用の仕方やデータの見方などは、やはり若者世代の方が得意なんですよね(笑)そもそもデジタルで入稿するとかも50歳にしてすべて初めての経験だったので、まずはそこから学び直しが必要でした。「編集部一の情弱」「テクノロジー音痴」と言われてましたね(笑)。

でも、その代わり「取材」となると、私の方がこれまでの経験や知識を教えてあげられる。50代でも自分が持っているスキルを貸して、その変わり新たな学びが得られるという、そういう貸し借り関係ができるということですね。

 

  後藤  

そうですね。しかしながら、僕自身も苦戦してきたのですが、やっぱりテクノロジーって特にトラブルがあったときとかは、バックエンドの専門的な話題がミーティングで出てくるじゃないですか?浜田さんはそんな時ってどういうふうに対処されていたのですか?

 

  浜田  

… 正直いうと、ほんと全くわからなかったので、いちいち「それってどういうこと?」って聞いていましたね。しかし、さすがにテクノロジー系のトラブルは、専門的な知識が必要になりますし、私にはどうやったら収束できるのかすら分からないので、そこは全てエンジニアに任せてしまい、逆にリスク管理や対外的なコミュニケーション設計などは経験値の高い私がやる!みたいな形で役割分担をしていました。「得意な人に得意なことをやってもらう」というマネージメントを組んでいましたね。

そして、これはこのあとの後半部に後藤さんにお聞きしたいのですが、これからリスキリングに向き合う時に、個人としてどういう気持ちや身構えでいれば良いのかという大事なヒントにもつながることかと思います。分からないことを恥ずかしがらずに、これから学ぶので知らなくても当たり前。しかし、自分がすでに知っていることや経験・得意分野は惜しみなく「give」する。そういったことで、うまく相互に学び高め合えるのではないかというのは、後藤さんのお話を聞いていて改めて思いました。

次回、2022年 6月15日(水) 配信予定の「 vol.2 」へ続く…